2年間努力し続けた大学生 キャンパスで給水を当たり前に
「マイボトルに給水する」という選択がしやすくなるよう、キャンパスにウォーターサーバーの設置をしようと2年間も活動を続けてきた学生がいます。東京大学の学生団体、「UTokyo Sustainable Network(以下、※UTSN)」に所属する3人の学生です。その結果、東京大学駒場キャンパスにはウォーターサーバーが13台も設置されました!
活動のきっかけや直面した課題とはー。mymizuのロビンとひなこが駒場キャンパスを訪問し、UTSN所属の3人の学生にお話を聞いてきました!
※UTSNとは(UTokyo Sustainable Network)
サステナビリティをテーマにした東大生向けのイベントを開催したり、東京大学が2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを達成できるよう行動計画を立てたり、持続可能な東京大学の実現を目指して2021年夏に設立された団体です。
トイレで給水するのはこりごり 冷たくて綺麗な水を
ウォーターサーバーを設置しようと思ったきっかけは。
大輝:水は誰でも飲みます。「給水する」というアクションを、学生がSDGsを考えるきっかけにしたいと思いました。SDGsを達成するための具体的なアイデアを考える授業で、マヒとはチームが同じでした。そこで「マイボトルに給水することを当たり前にし、ペットボトルの消費量を減らす」ことに取り組むことになりました。
ペットボトルに重点を置いたのはなぜですか。
マヒ:ペットボトルはマイボトルで代替できるので、取り組みやすいと思ったからです。
授業が終わった後も活動を続けたのですか。
大輝:はい。授業が終わっても活動を続けたのは、5人チームの中で私とマヒだけです。当時ティーチングアシスタントとして授業に参加していたリアは、東京大学サステイナブルキャンパスプロジェクト(TSCP学生委員会 以下、TSCP)のメンバーでした。TSCPは、私たちと同じようにウォーターサーバー導入を検討し、コストを試算していたので、そこの学生を紹介してくれました。意気投合し、TSCPのメンバーと一緒に活動することになり、UTSNができました。
他の環境系サークルから参加する人もいたのですが、辞めていく人がたくさんいました。ウォーターサーバー設置へのハードルが高く、何も進まないことが多かったからです。
そんな中でなぜ続けてこれたのですか。
マヒ:トイレで給水するのはもう嫌だったんです。冷たくて綺麗な水を給水したかった。
変化なし それでも活動し続けた
ウォーターサーバー設置のためにどんなことをしましたか。
マヒ:UTSNのSlackを作ったり、メンバーを増やしたりすることはもちろん、大学を説得するために、45ページの企画書を書きました。当時、私と大輝は企画書を書いた経験がなかったので、先輩であるリアの力を借りました。
大学と話す機会はありましたか。
リア:大学は、教員と学生の対話に力を入れていて、「学生ダイアログ」を開催しています。参加してみましたが「もっと多くの人と話してみなさい」というアドバイスだけでした。大学に1年間も働きかけたのに、何も変わりませんでした。
1年間も活動して、何も変わらなかったのですか。
マヒ:はい。そこで戦略を変え、まずは大学公式の学生団体である「東京大学教養学部学生自治会(以下、駒場自治会)」にアプローチしました。駒場自治会は学生の要望を大学側に伝え、交渉を通してその実現を目指す活動などを行っています。そこで私たちは試験的にウォーターサーバーを何台か導入してもらうよう協議したのですが、予算が足りず断念しました。
駒場自治会に出される学生の要望は多岐に渡ります。自動販売機の増設を望む人もいれば、私たちのようにペットボトルの消費量を減らすためにウォーターサーバーの設置を望む人もいます。学生の要望を検討する際に、「サステナブルであるべき」といったガイドラインがあったらよいのではないかと思いました。
そこからどうやって13台もウォーターサーバーを設置してもらえたのですか。
大輝:東京大学の藤井輝夫総長がグリーントランスフォーメーション(GX)を推進し始めたからです。大学が持続可能で包摂的な社会を実現することを目指して、温室効果ガスの排出量削減などに取り組むようになりました。その中でウォーターサーバーを設置してもらえることになったのですが、あまりに突然のことで正直驚きました。具体的で実現可能な提案だったので、大学主導で概ね企画書通りに導入してくれました。学生にアンケートを実施して給水する人数やコストの試算を行い、ウォーターサーバーを設置するべき根拠を明確にできたのが良かったのだと思います。
なにが1番大変でしたか。
マヒ:モチベーションの維持です。1年間活動しても成果がなかったので、「このプロジェクトは取り組む価値があるのか」と本当に落ち込みました。モチベーションを失い、活動していないメンバーもたくさんいました。それでも「学生へのアンケート結果を反映し、より良い企画書を書く」と自分を鼓舞し、活動を続けました。必要だったのは忍耐力です。最終的に、大学が設置してくれることになったのは、幸運でしたし、感謝しています。
リア:大学側の意思決定における透明性とコミュニケーションの欠如で苦労しました。
大学にメールを送り続けたり、別のプロジェクトに参加するメンバーと協力して大学に主張したりしました。最終的に、ウォーターサーバーが設置され、変化を起こすことができたことは自信になりました。
給水の列 取り組んでよかった
学生に給水してもらうために工夫したことはありますか。
マヒ:ポジティブなメッセージを発信することです。具体的には「ペットボトルはダメ」と発信するのではなく、「マイボトルに給水することは環境に優しく、いいこと」と給水の良さを伝えるようにしました。
また、mymizuを参考にしてやったことが2つあります。1つは、ステッカーです。給水のお礼に何か渡したいと思ったんです。マイボトルをあげるのではなく、ステッカーをはることで、少しだけ自分だけのマイボトルになればと。2つめは、ウォーターサーバーが設置されている場所のマップを作りました。マップがあれば、どこにいても近くのウォーターサーバーで給水しよう、となります。
ウォーターサーバーを設置した効果はありましたか。
大輝:学生が使ってくれている姿をたくさん見ています。一方で、成果を可視化することが今後の課題です。水量メーターにより、各台で給水されている量がわかるので、ペットボトルの消費量をどれくらい抑えられているかを分析できます。また、生協と協力し、飲料水の購買に変化があったかを調査したいです。そうすることで、駒場キャンパスにウォーターサーバーを増設したり、他のキャンパスにも設置したりするよう大学側に働きかけることができます。
学生も変化を起こせる 何でもやってみよう
企画書をホームページに掲載しているのはなぜですか。
マヒ・リア:この企画書「私たちが行動した」ことの証です。実際に導入してくれたのは大学なので、ウォーターサーバーには「UTokyo Green Transfromation」と大きく書いてあります。一方で「UTSN」は、その横に貼ってある私たちが作成したマップとポスターに書いてあるだけです。「努力すれば学生も変化を起こせる」と知ってもらうために、掲載しようと思いました。そして、見た人が何か行動を起こすきっかけになればと思っています。
今後やってみたいことは
マヒ:環境系サークルに所属する他大学の学生とコラボし、直面した課題などを共有したいです。お互いに学び合うことが大切だと思います。
行動を起こしたい人や起こしている人に一言お願いします。
マヒ:アイデアがあるなら、仲間を探して粘り強く取り組んでみてください。
大輝:アイデアを思いつくのと実際にやるのは全く違うこと。ウォーターサーバーを設置するなんて、誰もが思い浮かぶアイデアです。でも、実際に取り組んでみると実現させるのは大変でした。アイデアが浮かんだら、やってみてください。取り組む中で学ぶことがたくさんあり、成長できました。自信はなかったけど、取り組んでよかったです。
リア:私たちにとって、マイボトルに給水することは、良いことで、当たり前のこと。でも、多くの人にとってはそうではありません。反対意見を言われることがたくさんありますが、反対意見に備えること、そして戦略を考えることが大切です。
最後にmymizu共同代表のロビンからのコメントです!
2年間も努力し続けてきた学生の皆さんにお話を聞くことができて、たくさんの刺激をもらいました。自分たちのキャンパスだけでなく、他大学でも同じような取り組みが広がるよう企画書をホームページに掲載しているなんて素晴らしいことだと思います。
mymizuは、「サステナブルなキャンパスにするために何か取り組みたい」という相談を多くの学生からもらいます。是非、東京大学の例を参考にしてみてください。「給水しやすいキャンパス」の新たな誕生を期待しています!
mymizuはこれからも意欲ある学生と一緒に活動し、「サステナブルなキャンパス」の輪を広げていきます。