リサイクルはゴミ問題の解決策にならない?明日からできる、リサイクル以外の3つの解決策
mymizu Blog Series「エコへの第一歩 with Kanae」
当シリーズは、mymizuメンバーの長谷川佳苗と一緒に環境問題、そして私たちがすぐにでもできるエコ活動について学び、新しいライフスタイルへの第一歩になることを目標としています!
リサイクルは解決策じゃない!?リサイクルの問題点とは?
今、世界中で毎分100万本のペットボトルに入った水が販売されています。
このペットボトルのほとんどが技術的にはリサイクル可能ですが、大半は埋め立て地に捨てられるか、海に流れ着いているのが現状です。
海に流れ着いたプラスチックがどうなるかはこの記事をチェック!
>>前編「海洋プラスチックごみとマイクロプラスチックはどこからくるの?」
>>後編「世界と日本のプラスチックゴミの現状」
日本のプラごみ全体のリサイクル率は85%と言われていて、他の国々と比べるととても高い割合です。
しかし、リサイクルと聞いて皆さんが想像するような「新しい商品に生まれ変わるリサイクル(材料リサイクル・ケミカルリサイクル)」は極めて低い割合です。
では、それは一体何パーセントなのでしょうか?
答えは、、、27.2%です!
また、この内の大半をマレーシアやベトナムをはじめとする東南アジアに輸出しており、国内でのリサイクル率は非常に低いです。
世界的に見ると、これまでに生産されたプラスチックの内79%が埋め立て、約12%は焼却され、9%だけがリサイクルされています。
たったの9%です!
きちんと分別をしてる私たち消費者からすると、なんだかちょっと裏切られたような気持ちになりますよね。
ではどうしてこれほどまでに、リサイクル率が低いのでしょうか?
それはコストとエネルギーがかかりすぎるからです。
まず、いろんな種類のプラスチックがごちゃ混ぜになって出される資源ごみを、分類するところからリサイクルは始まります。
プラスチックと一口に言っても、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなど様々あり、異なる素材のプラスチックを一緒に溶かすことはできません。また、うまく分類ができたとしても、そのプラスチックに油などの汚れがついていれば洗浄もしなくてはいけません。
そして、うまいこと新しい素材に生まれ変わったとしても、プラスチックは再利用するたびに劣化します。
一方で、新しいプラスチックは安く、リサイクル品よりも質が良いのです。
そうなると、飲料水メーカーはコストもエネルギーも抑えられる新しいプラスチックを使いたくなってしまいますよね。
こうして見てみると、リサイクルをするだけでプラスチック問題を解決することは難しいことがわかります。
また、資源ごみとして出されたプラスチックは国内外のリサイクル施設に運送される際にも多くの温室効果ガスを生み出します。
しかし、これらの問題は何十年も前から存在していました。そして、新しいリサイクル技術や高価な機械が開発されたとしても、今挙げた問題の根本的な解決にはなりません。
しかし、一般の人々はこれらの問題についてほとんど知りません。
それは何故でしょうか?
課題が多いリサイクル。そもそもなんでこんなに主流になったの?
それは、大手石油会社や飲料水会社のマーケティングに私たちが踊らされたからです。
ここで少し昔話をしましょう。
ボトル入り飲料水の始まりは17世紀のイギリスにまで遡ります。
当時、コレラや赤痢などの病気が公共の水道水に残っていた時代に、湧き水を使ったボトル入り飲料水が売れ始めました。
しかし、1970年代に公共の水道水が比較的安全になり、消費者の信頼を獲得し始めました。
そうして売上の下がってきた大手飲料メーカーは、水系感染症のいくつかの症例を公表することで、水道水に対する消費者の不安を必要以上に煽るPRキャンペーンを打ち出したのです。
そして1990年代には、アメリカの大手飲料企業が、ボトル内の水は何も天然の湧水から来なくてもいいと気付きはじめました。
彼らは、都市の蛇口から水道水を取り出し、ろ過し、ラベルを貼るだけで水道水の30倍の値段で販売することに成功したのです。
その後、20世紀初頭に都市が水道水を塩素で消毒し始めたとき、ボトル入り飲料の人気がまた高まり始めました。
と、ここまではひと昔前の話ですが、今のペットボトルのイメージはどうでしょうか?
水道水かペットボトルに入ってる水だったら、なんとなくペットボトルに入っている方が美味しいし、安全な気がしますか?
でも、実は水道水の水質基準より、ミネラルウォーターの製造基準のほうが規制が甘いのです。
例えば、ミネラルウォーターでは人体に有害な鉛やヒ素について水道水の5倍まで含有することが認められています。
ミネラルウォーターは、食品衛生法で「清涼飲料水」に分類されています。これはいわゆる嗜好品扱いなので水質基準が甘く、殺菌・除菌工程があるものは39項目、ない場合はわずか14項目を満たすだけで販売が許可されています。
一方の水道水は水道法により基準項目として人の健康の保護又は生活上の支障を生じるおそれのある項目51項目が定められています。さらに、その他農薬などを含めた水質管理目標設定項目が設定されています。例えば、神戸市ではこれらの基準項目に加え、必要に応じて200項目以上の検査をおこなっています。
大きな差ですよね。
ミネラルウォーターの水質基準の甘さは、1995年に様々なメーカーのミネラルウォーターからプラスチック片の混入が見つかったり、1990年にあるメーカーのミネラルウォーターからベンゼンが検出されて製品回収に至った事例からも見受けられます。
もちろん、一部のコミュニティでは、ボトル入り飲料水がライフラインを提供しています。衛生設備や配送インフラが不足しているか存在しない世界中の多くの場所では、ボトル入りの水が唯一の選択肢になることもあります。また、災害時の非常水としても不可欠なので、ボトル入り飲料が完全に悪者ということはありません。
しかし、全国どこでも水道水が安全に飲める日本でボトル入り飲料水が必要かと聞かれると疑問が残ります。
では、現代の日本が直面している問題とは?
数ある問題の中でも解決に急を要しているのが埋立地の不足です。
環境省の発表によると、全国にある全てのゴミ埋立地が22年後にはいっぱいになってしまい、ゴミの受入をできなくなってしまいます。
埋立地がなくなってしまうのであれば、新たに増やせば良いじゃないか、と考える人も少なくないかもしれません。
しかし、埋立地の新設には、適切な土地を見つけ、周辺住人の理解を得ることが必要になります。もし、この二つの条件をクリアできたとしても、環境への影響を無視することはできません。
有害物質による健康・農作物への被害や河川・生態系への影響など、いくら技術が向上したとは言え、埋立地による周辺環境への影響は、簡単に解決できるものではないのです。
明日からできる、リサイクル以外の3つの解決策
ここまでで、リサイクルがゴミ問題解決の最良の解決策ではないことがよく分かりました。
プラスチックゴミ問題の解決には、これから出るごみを未然に防ぐ対策と既に存在するプラスチックゴミを減らす対策が求められます。
では、私たちにできることは一体なんでしょう?
モノを長く大切に使う
リサイクルはとても大切なことですが、その前に「使い捨てを減らす」「必要なモノ以外は買わない」「繰り返し大切に使う」ことを心がけることが、ごみの減量化につながります。
そのための行動指針となるのが5Rです!
Refuse(リフューズ)
不要なもの、余計なものは「いりません」と断ること。
例えば、コーヒーを買うときにマイタンブラーを持ち歩くことで、使い捨てのカップをもらわずに済みます。
Reduce(リデュース)
ごみを減らすこと。
例えば、食品は必要な分量だけを買い、料理は食べ残さないようにする。
また、生ごみをよく水切りしてから、堆肥化させる。(生ごみの約80パーセントは水分です)
Reuse(リユース)
まだ使えるものを、くりかえし使うこと。
例えば、不要になったものは、フリーマーケットやリサイクルショップへ持っていく。
量り売りのお店を活用してできるだけ詰め替え品を購入する。
Repair(リペア)
修理しながら、モノを大切に使い続けること。
例えば、ズボンが破れたときには、当て布などリメイクしてもう一度使う。
Recycle (リサイクル)
資源として再生して使うこと。
例えば、分別ルールをきちんと守って、資源とごみを分別して出すとリサイクルがしやすいです。
家電リサイクル法対象の家電はメーカーに引き取ってもらう。
まずは、ごみとなるようなものをそもそも出さないように不要なものは買わない・もらわないことが大切です(リデュース)。そのうえで、再度使えるものは再使用したり(リユース)、直して使える物は、修理して大切に長く使い続けましょう(リペア)。
そして最後に残ったものに関しては、原材料として再利用するようにしましょう(リサイクル)。
普段の生活から5Rを実践すると、家庭で出るゴミが劇的に減ります!
2. 企業や政府に声を上げる
有限な資源が使われる以上、プラスチックであろうが紙であろうが、素材が何かということは本質的な問題ではありません。そもそも使い捨ての素材に頼らない、リユース(再利用)・リフィル(詰め替え)社会をつくっていくことが大切になります。
そんな社会を実現させるには、一人ひとりの心がけだけではなく、政府も企業も一緒になって、使い捨て包装に依存したビジネスモデルや暮らしのあり方自体を変えなければいけません。
それは、スーパーなどのお店で容器を持ち込んで野菜や洗剤を量り売りで買えたり、プラスチックや紙の使い捨てパッケージに頼らなくても、便利で気持ちよく過ごせる世の中。
オーストラリアの量り売りショップにインタビューした際の記事はコチラから!
>>「オーストラリアのゼロウェイストなバルクショップの舞台裏を大公開!」
では、リユース・リフィルが当たり前の社会を目指すために、私たち消費者ができることは何でしょうか?
それは、、、声を挙げることです!
例えば、国際的な環境保全団体が募っているオンライン署名に参加することで政府や経済界にあなたの声を届けることができます。
<オンライン署名>
Green Peace:使い捨て社会から、リユース・リフィルが当たり前の社会へ
Change.org:日本も『海洋プラスチック憲章』に一日も早く署名を!
また、あなたが愛用するブランドや企業に対して不必要なプラスチックの使用を削減し、リユース・リフィルが可能になるモデルを作り上げてほしいことを訴えかけてみましょう。
これは難しく聞こえるかもしれませんが、実は至ってシンプルなことなんです。
身近なところだと、あなたがいつも通うスーパーマーケットの意見箱に意見を寄せることや、企業のウェブサイトのお問い合わせページからメッセージを送ることでも声を届けることができます。
3. ビーチクリーンに参加する
ここまでは、プラスチックごみを未然に防ぐ対策について話してきましたが、既に存在するプラスチックゴミについてはどう向き合っていけばいいのでしょうか?
私たちができることの一つとして、ビーチクリーンや街中のゴミ拾いがあります。
ゴミ拾いはあまり効果がないと思う方も多いかもしれませんが、「データ収集」と「教育」いう意味ではとてもインパクトのある行動です。
〜データ収集のためのゴミ拾い〜
街中やビーチでのゴミ拾いが大切なのは、地域ごとに「どのゴミの種類が多いのか?」「貧困度とゴミの多さに相関関係があるのか?」など、世界中から有益なデータが収集できるからです。
拾ったゴミのデータを例えば、環境保全団体オーシャン・コンサーバンシー(日本の窓口は一般社団法人JEAN)に提供することで、どういった種類のゴミが特に環境に害をもたらすのか、そして拡大するゴミ問題やプラスチック問題にどう立ち向かって行くのかを考える手助けとなります。オーシャン・コンサーバンシーはこれまで30年以上の間、100以上の国と一緒に約1億キロのゴミを集め、調査を続けています。
このデータ収集にはコチラから参加登録ができます!
イベントでゴミをカウントする際には、拾った後に数えるのではなく、データ記録係を各グループに一人ずつ置いて、ゴミを拾いながらカウントしていくのが効率的です。ゴミ拾いをする際には、怪我や感染症防止のために軍手やトングを使うのを忘れずに!
mymizuでもビーチクリーンを不定期で行っているので、ウェブサイトのイベントページから日程や詳細をチェックしてみてください!
他にもゴミ拾いのイベントは全国各地で開かれているので、お住まいの近くのイベントを探してみましょう!
ゴミ拾い団体や環境イベントを簡単に探せるサイト、BLUE SHIPが便利です。
近所で見つからなかったら、自分でイベントを開いてみてもいいかも!?
また、ゴミ拾いは何もイベントに参加しなくても、普段から一人で気づいたときに拾うだけでもデータ収集に貢献することができます。
その際には、ゴミ拾いSNSピリカ(日本語対応)やClean Swell(英語対応)、Litterati(英語対応)のアプリを使うと簡単にデータをシェアすることができます!
〜教育につながるゴミ拾い〜
ゴミ拾いをしていてよく目立つのは、タバコの吸殻やプラスチック製のペットボトル、スプーン、傘、使い捨てマスクなどの日用品です。ゴミ拾いをすることで、自分の日常の消費行動がどれだけゴミ問題に影響を与えているのか気付くきっかけとなります。
また、自分の近所を綺麗にすることで、自分の住んでる街に愛着が湧き、もっと大切にしたいと思えるようになります。
エコな行動は、結果が見えにくくてモチベーションを保つのが大変な時もありますが、自分がひとかけらでもゴミを拾うことで、野生動物がプラスチックを誤飲するリスクやマイクロプラスチックになるゴミを確実に減らすことに繋がると思えば、やる気も出てきますよね。
また、特にビーチや川、山でゴミ拾いをしていると、自然の美しさや自然と触れ合うことの楽しさも思い出させてくれます。
金銭的に余裕のある方や企業だと、プラスチックを石油に戻す油化装置を活用するのもCO2削減に繋がります。
この油化装置を使うと、1キロのプラスチックから1リットルの石油を生み出せます。すでにカナダ・アイスランド・パラオ・アフリカ・フィリィピン・マーシャル諸島にも導入実績のある油化装置は、プラスチックゴミ問題を解決する手段の一つとなるかもしれません。
こうして見てみると、ゴミ問題・プラスチック問題の解決策は一つではないことがよくわかります。ゴミが増えてしまう原因自体を減らしていくのと同時に、すでに自然環境へ溢れてしまったゴミを回収することが大切です。
そのためには、他の環境問題と同じように、社会に関わる全ての人が、いろんな対策を並行して行うことが求められています。
ゴミで溢れた世界を次の世代に残さないために、私たち消費者はできるだけ使い捨てをなくしながら、企業や政府に変化を求め続けることが大切です。
mymizuアプリを使えば、今日から簡単にペットボトルの使用量が削減できるのでぜひ利用してみてください。
あなたも環境問題の解決に貢献しませんか?
ひとりひとりが協力して行動を起こせば大きな変化が生まれます。
アクションページでは、
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【メンバー紹介:長谷川佳苗】
四六時中エコなことを考えている「エコフリーク」なわたしはみなさんが自分のためにも環境のためにも持続可能で健康的なライフスタイルを送るヒントを見つけるお手伝いをできればと思い、当ブログを書かせていただいています。地元名古屋から始まった地球に優しい生活への旅。これまでゴミ拾い、ビーガンピクニック、ヨガ、気候変動に関するプレゼンテーションなどのイベントを企画して、350名以上の方と関わってきました。また、政府に気候変動への取り組みを訴えている国際的な団体Fridays For Future Nagoyaの主要メンバーも務め、元アメリカ副大統領のAl Gore氏主催のClimate Reality Leadership training を受講し気候危機に関する知識も深めてきました。環境問題について話すことが「意識が高いこと」ではなく当たり前になる社会を目指して、オーストラリアから情報を発信していきます!