オーストラリアのゼロウェイストなバルクショップの舞台裏を大公開!

mymizu Blog Series「エコへの第一歩 with Kanae」

当シリーズは、mymizuメンバーの長谷川佳苗と一緒に環境問題、そして私たちがすぐにでもできるエコ活動について学び、新しいライフスタイルへの第一歩になることを目標としています!


 

日本でも最近少しずつ耳にするようになったバルクショップ。

それでは、バルクショップとは何かご存知ですか?


バルクショップとは一般的に、量り売りで買い物をできるお店のことを言います。


オーストラリアに住んでいると一つの街に必ず一つか二つはあるバルクショップ。

今回の記事では、私が実際に住んでいるオーストラリアの西側・エックスマウスにあるバルクショップ「ニンガルーバルクフーズ」のオーナー、ジェス・スミスさんにインタビューしてきました!


zero waste shop_mymizu

エックスマウスは世界遺産にも登録されているニンガルーリーフという、グレートバリアリーフの次に大きいサンゴ礁が目と鼻の先にある、人口2,500人ほどの小さな街です。

サンゴ礁で覆われた美しい海にはジンベエザメやザトウクジラ、シロナガスクジラ、シャチ、マンタ、サメ、イルカ、亀などがいて、ダイビングやシュノーケリングのボートツアーでも有名です。

ちなみに、この写真はマンタと私です!

ちなみに、この写真はマンタと私です!

このエックスマウスにあるバルクショップでは洗剤、バスグッズ、米、パスタ、スパイス、オイル、お菓子、コーヒー、紅茶、お野菜など、生活に必要なもののほとんどを購入できます。私も毎週のように通ってる行きつけのお店です

それでは、ジェスさんに聞いてみたバルクショップの実態を一緒に見てみましょう!

Ningaloo Bulk Foods

1. いつから「環境に優しい生き方」を始めたのですか?

幼い頃から環境のことはいつも気にして生きてきました。

大学で海洋生物学と動物学を専攻していたこともあって、2008年から、まずは魚や貝を食べるのをやめました。海の健康を保つことに情熱を注いでいたので、大学卒業後は海のツアーガイドおよび海洋研究者として10年働きました。その頃は海洋保全、乱獲、そして、特にサメの教育について力を入れて、活動をしていました。

2016年には、自分が選ぶ食べ物が環境に及ぼす影響に気づき、肉や乳製品を食べるのをやめることを決意しました。

そしてその翌年に、プラスチックが環境に与える壊滅的な影響を意識しはじめました。

その大きなきっかけとなったのが、オーストラリアのテレビシリーズ "War on Waste” です。この番組では、廃棄物が環境に与える影響と解決策に焦点を当てていますが、これを観てから、自分の日々の習慣とプラスチックの消費量を本格的に変え始めました。


**2020年に報告された、サメによる人間への攻撃は合計51件、うち8件が死亡。それに比べて、毎年、世界中で1億匹のサメがヒレ、油、皮、肉を摂るために、人間によって殺されている。



2. なぜニンガルーバルクフーズを始めようと思ったのですか?

2017年に、まずは、ボディウォッシュを石鹸に変えたり、竹製の歯ブラシを使い始めたり、プラスチックに包まれていない野菜を購入したりすることで、プラスチックの消費量を減らし始めました。しかし、6か月経ってもまだ多くのプラスチックを使用していることに気づき、落胆しました。

当時、他にバルクショップがなかったエックスマウスでは、プラスチックを買わずに生活するという選択肢はなかったのです。


また、エックスマウスではリサイクルのシステムがないため、私たちが買う全てのものは海からわずか数キロのところにある埋立地に捨てられてしまいます。

エックスマウスでツアーガイドとして働きながら、マンタの研究をしていた時にも、頻繁に海に漂うプラスチックごみに遭遇しました。時にはマンタが餌を食べる潮帯付近でさえもプラスチックごみが浮かんでいるのを発見しました。

そして、エコツアーと呼ばれるツアーでさえ毎日大量のプラスチックごみが出て、捨てられていました。それは主にプラスチック包装された食品やおやつ、ペットボトル飲料、または食器用洗剤や手洗い用洗剤のプラスチックボトルであったりします。

このような経験に加えて、多くの刺激的な人たちと出会ったことが、観光業から離れ、プラスチックフリーのゼロウェイストショップを開くきっかけとなりました。エックスマウスのコミュニティおよび、この素晴らしい場所を訪れる観光客にプラスチック使用量を減らすきっかけを提供できればと思い、このニンガルーバルクフーズを2019年にオープンしました。

Ningaloo Bulk Foods

3. ニンガルーバルクフーズのミッションは何ですか?

私たちのミッションはコミュニティにとって便利で、手ごろに商品を購入できるお店を開くことです。そして、プラスチック問題について人々を教育し、埋立地やニンガルーリーフにたどり着くプラスチックごみの量を減らすことを目的としています。

それを実現するために、家庭で必要になるもの全てを備えました。食料品から、お菓子、オイル、スパイス類、掃除用品、再利用できるエコグッズ、日常的に使うプラスチック製品の代替品まで幅広く揃えています。

4. ニンガルーバルクフーズを開く以前に、起業の経験はありましたか?

全くありませんでした。むしろ、起業とは真逆の人生を歩んできました。

私は物心ついた頃から海と自然に心を奪われ、海洋生物学者として生きてきました。オフィスでの仕事は性に合わず、避け続けてきました。

しかし、ニンガルーバルクフーズを開いた頃の私は、もっと新しいことを学びたい、新しいことにチャレンジしたいと思っていました。 そこから、ビジネスの始め方、事業計画の作成、経費とランニングコストのシートの作成、税金と法律についての記事を読み漁りました。



5. ビジネスが成功に至った秘訣はなんだと思いますか?

ニンガルーバルクフーズを開く前、プラスチックを減らす生活を始めましたが、すぐに行き詰まりました。その頃、エックスマウスで買えるものと言えば全てプラスチックに包装されていたからです。

「他の人々はどのようにしてゼロウェイストな生活を送っているんだろう?」と疑問が浮かびました。

その時に、The Source Bulk FoodsやThe Wasteless Pantryなどのバルク食料品店の存在を知るようになりました。当時の私は、バルクショップの近くに住んだこともなければ、バルクショップで買い物をしたこともありませんでした。

でも、そのコンセプトは非常に単純でした。 量り売りでまとめて購入し、人と共有し、プラスチック包装を減らす。 当初、私たちが思い描いていたアイデアは、コミュニティとしてまとめて購入し、それを共有することでプラごみを削減するという、小さな協同組合として始めることです。

しかし、話が進むにつれて、私たちのアイデアを支持する声が高まっていきました。そこで、「どうせ始めるなら、誰もがゼロウェイストな買い物をできる店を始めよう!」というアイデアに発展していきました。

 正直なところ、儲かるかどうかは関係なく店を開いたことが、ビジネス成功の秘訣だったと思います。 人々が来店して買い物をしたなら、それだけプラスチックを削減することに繋がるので、それだけで十分でした。私たちにとって、お金はただのおまけでした。



6. ニンガルーバルクフーズを経営していて一番誇りに思うことはなんですか?

エックスマウスのコミュニティがどれだけ店のアイデアを後押ししてくれていて、多くの人々、そして企業が私たちの店で買い物をするようになったことです。その結果、プラスチックごみを大幅に削減できたとが一番誇らしいです。こんなに多くの人たちが私たちの店で買い物をするなんて、開店当初は思ってもみませんでした。



7. ニンガルーバルクフーズを開くにあたって一番困難だったことはなんですか?

一番大変だったのは店を開く不動産を探すことでした。私たちは運良く、ちょうどいいタイミングで物件を見つけることができましたが、店を開く6ヶ月前まで空きのある物件はほとんどありませんでした。

あとは、どんなスモールビジネスでも共通して直面するであろう課題でしょうか。いかにしてゼロからビジネスをスタートさせるのか、お金はどう工面するのか、果たしてビジネスが上手くいくのか、客足が本当に伸びるのか、など先の見えない不安もありました。



8. 困難な時はどのようにして乗り越えましたか?

そもそもなぜ店を開くことにしたのか、そして、これが地球環境の未来を守るために行うべき正しいことなんだということを常に思い出していました。

自分のやっていることが地球規模の問題を直接解決することにつながらなかったとしても、地球の未来のために意識的に正しい選択をしていると胸を張って言えます。

また、サーフィンやシュノーケリングなどをしながら、海で過ごすことでリフレッシュするとともに、多くの恩恵を与えてくれる海に恩返しをするためにもっと頑張ろうという気持ちになります。

Ningaloo reef

9. 店で一番お気に入りの商品はなんですか?

甘いものがとても好きなので・・・Loving Earthの塩キャラメルチョコレートです!

bulk shop_mymizu

10. どの商品が一番の売れ筋ですか?

一番というわけではありませんが、ドライマンゴーとチョコでコーティングされたラズベリーの引き分けです。



11. 他に店頭で取り扱いたい商品はありますか?

普段から市場に出る新しいエコな商品は探し続けていますよ。

店をオープンしたての頃は今ある品揃えの半分しかありませんでしたが、定番の商品を揃えてから、少しずつ新しい商品を増やしていくことで、ここまで充実した店になりました。

一番追加して良かったものはピーナッツバターを作れる機械です。この機械を買うために5ヶ月も貯金をしました。

最近では新鮮な果物や野菜に加えて新しい商品もどんどん増えているので今の品揃えに満足しています。ただ、ブラシも含めて完全にプラスチックフリーな歯ブラシを店頭に並べたいのですが、残念ながらその商品自体がまだ存在しません。

bulk shop

ここで一旦インタビューは中断して、実際にお店に連れていってもらいました!

店内の装飾は、旦那さんが配管工だったこともあり、壁からキッチン、テーブルやラックまで全てリサイクル木材などを使って一から手作りしたというので驚きです。

bulk shop

私も毎週のようにここニンガルーバルクフーズで買い物をしていますが、特に助かるのがこの誰もが自由に使える空き容器です。

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コミュニティが持ち寄った空き容器を店側が無料で提供し、また使い終わったら客が店に持ってくるという循環型のシステムが確立しているバルクショップは数少ないとジェスさんは話します。

通常のゼロウェイストのお店では、利益を生むためにこういった容器は無料で提供されず、販売されていることがほとんどです。

bulk shop_mymizu


お店の中には「サンゴにも肌にも優しい日焼け止めの選び方」の記事で紹介したサンゴに優しい日焼け止めももちろん置いてありますよ!

bulk shop_mymizu

さて、ここまでは表舞台の紹介をしてきましたが、今回は特別に普段お客さんは入れてもらえない店の裏側まで見せていただきました!

behind the scenes _Ningaloo bulk foods

ここで、私が個人的に気になっていた最後の疑問を投げかけてみました。

12. ゼロウェイストとは言っても、店の舞台裏で実は出てしまうゴミにはどのようなものがありますか?また、どのようにしてゴミを削減していますか?

私たちは会社の信念や環境に対する向き合い方によってサプライヤーを厳しい目で選んでいます。なので、食品以外の商品はほぼプラスチックフリーのパッケージに包まれて配達されます。

ただ、初めて注文した乾燥食品が10〜25キロのプラスチック包装に包まれて配達された時はとてもショックでしたね。これは今の所どうしても避けられない問題ですが、こうして出たプラスチックは責任を持って対応しています。

透明なプラスチックゴミはラベルを剥がして、綺麗に洗って、段ボールとともにパースにリサイクルのため送り戻しています。色付きのプラスチックは貯めておいて、年に一回パースへ持って行きます。

bulk shop_mymizu

洗剤などのクリーニング用品に関しては、パースにある特定の会社を選んでいます。というのも、店の自費負担とはなりますが、この会社なら洗剤類が入っていた15Lの容器を回収してちゃんと再利用してくれるからです。

bulk shop_mymizu

また、こぼしたりした食品廃棄物は堆肥として利用しています。 


そのため、店から出たゴミで実際に埋め立て地に送られるのは、掃除の際に使用する数枚のペーパータオルだけです。

食品に関しては、衛生面などからどうしてもプラスチック包装が必要になります。それでもリサイクルできるなら、いいじゃないかと思うかもしれませんが、リサイクルをする工程で出る二酸化炭素のことを考えると、リサイクルが完璧な解決策ではないことがわかります。



これから食品包装用に、もっと水にも強くて、サイズも大きい生分解性のプラスチックの開発が進めば、本当の意味でのゼロウェイストを実現することができます。

リサイクルがなぜ完璧な解決策でないかはコチラの記事から。

>>「リサイクルはゴミ問題の解決策にならない?明日からできる、リサイクル以外の3つの解決策

zero waste shop_mymizu


表向きにはゼロウェイストと謳っていても、店の舞台裏では大量のプラごみを生産しているバルクショップも実は多かったりします。

ジェスさんが経営するニンガルーバルクフーズのように、真摯にプラごみ問題と向き合って、自然環境とコミュニティのために存在している店が、これから日本にも誕生したら素敵だなとジェスさんのお話を伺って思いました。

そのためには、店側だけでなく私たち消費者が「環境に優しい買い物をしたい!」とマインドをシフトしていき、店側にその気持ちを伝え続けることが大切です。

Ningaloo Bulk Foods

また、こちらの「プラなし生活さん」のブログに、日本で見つかるバルクショップの一覧がわかりやすくまとまっているので覗いてみてください。

とは言っても、住んでる場所によってはバルクショップを探すのはまだなかなか大変だと思うので、まずはスーパーマーケットに行ったらプラスチック包装されている野菜や果物を避けることや、プラ容器に入ったシャンプーの代わりに固形のシャンプーバーを使うことから始めてみるのも一つの手です。


また、今回のインタビューを読んで、「バルクショップを今後開きたい!」と思った、そこのあなた。

開業方法は様々ですが、例えば、斗々屋のZero Waste Shopping Systemを導入すれば、初期費用を抑えて、一からバルクショップをオープンすることができます。既存店を持っていれば、店内の一部を利用することで、 最短 1 週間で「量り売り」を始めることもできるようです。

勇気を出して一歩を踏み出したジェスさん。

皆さんも新しい年に、新しいことに挑戦してみませんか?


あなたも環境問題の解決に貢献しませんか?
ひとりひとりが協力して行動を起こせば大きな変化が生まれます。

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今日からすぐにでも始められるアクションをご紹介しています。
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【メンバー紹介:長谷川佳苗】

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四六時中エコなことを考えている「エコフリーク」なわたしはみなさんが自分のためにも環境のためにも持続可能で健康的なライフスタイルを送るヒントを見つけるお手伝いをできればと思い、当ブログを書かせていただいています。地元名古屋から始まった地球に優しい生活への旅。これまでゴミ拾い、ビーガンピクニック、ヨガ、気候変動に関するプレゼンテーションなどのイベントを企画して、350名以上の方と関わってきました。また、政府に気候変動への取り組みを訴えている国際的な団体Fridays For Future Nagoyaの主要メンバーも務め、元アメリカ副大統領のAl Gore氏主催のClimate Reality Leadership training を受講し気候危機に関する知識も深めてきました。環境問題について話すことが「意識が高いこと」ではなく当たり前になる社会を目指して、オーストラリアから情報を発信していきます!