持続可能な漁業を応援する8のコツ
mymizu Blog Series「エコへの第一歩 with Kanae」
当シリーズは、mymizuメンバーの長谷川佳苗と一緒に環境問題、そして私たちがすぐにでもできるエコ活動について学び、新しいライフスタイルへの第一歩になることを目標としています!
前回の記事では「世界と日本の漁業の課題」や「持続可能な漁業とは何か」についてお話ししました。
現代の漁業は、環境破壊を招く恐れのある養殖、海鳥・ウミガメ・イルカやクジラの命を奪う混獲やゴーストフィッシング、人権を無視するIUU漁業と様々な課題を抱えています。
実際に毎年約30万羽の海鳥、約25万頭のウミガメ、約30万頭のイルカやクジラが漁の網に絡まり、その多くが命を落としています。
こんなにたくさんの課題があるのを目の当たりにすると、魚を食べること自体に疑問をいだいてしまいます。「海の動物やその環境を守るために魚を食べない」という選択肢を選べたら一番いいですが、いきなり全く食べないというのは難しいものです。
魚や肉を食べないという選択肢は環境保全以外にもたくさんのメリットがあるので、是非「ビーガンってなに?地球、動物、身体にも優しい生き方」の記事をご覧ください。
では、海の健康を保つために、私たち個人としては一体何ができるのでしょうか?
ここからは、日本で少しでもより持続可能な魚を選ぶための8のコツをご紹介します!
1. 商品ラベルを見る癖をつけよう!
スーパーで魚介類を買うとき、何を基準に選びますか?
値段、鮮度、大きさなどが頭に浮かぶかと思いますが、「魚の持続可能性」も判断基準に含めてみましょう。
そこで大切になるのが、商品ラベル(商品のパッケージに貼ってある、商品名などが記載されたシール)を見て、その魚が持続可能かどうか自分自身で判断することです。
同じ魚でも原産地・資源量・漁獲方法・養殖方法などによって、その持続可能性は変わってきます。サバだから大丈夫、エビだから避けたほうがいい、など一概には言えないのです。
「じゃあ一体何を基準に判断すればいいの?」と思いますよね。
そんなときに役立つのが、WWFジャパンが発行している『おさかなハンドブック』です!
タイトル:『おさかなハンドブック』
発行所:公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
発行:2020年9月
このハンドブックでは、日本の消費者に身近な23種の魚を資源状況や漁獲方法、養殖方法を元に、それぞれの魚の持続可能性の度合いを5段階で分かりやすく評価しています。
また、英語で検索する際にはThe GoodFish Project を参考にしてみてください。便利なアプリもあります!
また、ほぼ全ての魚介類に共通して使える下記の基本ルールも参考にしてみてください。
⑴魚のサイズが小さすぎない
(魚が小さいということは、まだ繁殖期を迎えていない可能性があります)
⑵季節の魚である
⑶二枚貝である
(ホタテ、カキ、ハマグリなどの二枚貝は比較的持続可能な漁業法・養殖方法が確立されています)
2. 絶滅危惧種は避けよう
スーパーの鮮魚売り場は「将来絶滅するかもしれない魚」の展示場になっている。専門家から今、そんな指摘が出ています。絶滅寸前の魚が乱獲され、「普通の魚」として大量に売られているのです。
では、鮮魚売り場やお寿司屋さんで好まれる寿司ネタの中で、国際自然保護連合(IUCN)に指定されている絶滅危惧種の魚はどれでしょうか?
答えは、、、
「2種類のクロマグロ(本マグロ)」「ミナミマグロ」「メバチマグロ」と「ニホンウナギ」「ヨーロッパうなぎ」「アメリカうなぎ」です!
日本はマグロの消費量世界第1位の国です。世界で獲れるマグロの約2割を消費し、クロマグロに至っては8割を消費しています。
マグロの中でも特に状況が深刻とされる太平洋クロマグロは、漁がなかった時代に比べるとたった3.3%の個体数しか残っていないという調査結果が2018年に発表されています。
この急速な減少の原因をIUCNは、「おもにアジア市場に提供するスシや刺身のために、産卵前の未成魚が乱獲されているため、全体的なマグロの個体数が減っている」と指摘しています。実はクロマグロ、95%以上が0歳から1歳の卵を産む前の小さなうちに乱獲されてしまっているのです。
では、ニホンウナギはなぜ激減したのでしょう?
それは、うなぎの住処を奪うダム建設や地球温暖化による海水温の上昇や海流の変化、水質の悪化、そして人間による乱獲によると考えられています。
天然マグロやウナギの数が減ったのであれば、養殖をすれば良いじゃないかと考えがちですが、そうそう簡単にはいきません。前編でもお話したとおり、養殖の大半は天然の稚魚を海から獲ってきていけすに入れるところから始まります。そして、マグロの場合だとその体重を1キロ増やすために、なんとイワシやイカなどの餌になる魚が20キロ以上も必要になります。
また、稚魚を海から獲らない完全養殖も研究が進められていますが、実現には時間がかかるうえに、最終的に出荷できるまでに育つのはほんのわずかだと言われています。
そうは言っても、「マグロもウナギも食べたい!」と思う日もあるかもしれません。
そんな時は、絶滅危惧種に指定されていないビンチョウマグロを選んだり、比較的に持続可能な漁業法・養殖方法が確立されている例えば、カツオやブリ、サバなどを選んでみてはいかがでしょうか?
3. オーガニックを選ぼう
オーガニックな魚って一体何なのでしょうか?
それは、養殖魚のうち、与えられるエサ全てが認定された有機食品であり、従来の養殖で広く使用されている農薬や抗生物質も使用されていない魚のことを指します。
有機物しか使われていない養殖場は、環境への負担が他と比べると少ないと言えます。
しかし、いくらオーガニックであったとしても動物福祉の観点から見ると、少し疑問は残ります。オーガニックの原則とは「魚を含む家畜が、その“自然な”行動パターンを表現でき、可能な限り自然な飼育状態(飼育密度)に近づけること」とされています。
養殖の魚はケージの中で、その多くの場合は過密な状態で飼育されています。そうすると、自然な行動パターンや飼育密度が守られているとは言えない場合があります。
養殖魚の福祉に関してさらに詳しく知りたい方は、アニマルライツセンターが翻訳したAquatic Animal Alliance(水生動物連盟)の「養殖における水生動物福祉に関する主要推奨事項」をご覧ください。
それでも、環境負担のことを考えれば、できるだけオーガニックの商品を選んでいきたいところです。
4. さかな市場に行こう!
地元の市場で購入すれば二酸化炭素排出量が少ないだけでなく、安価で新鮮な魚が手に入ります。
また、漁師さんと直接話すことで、販売している魚が持続可能な方法で漁獲・養殖されているかを確認するチャンスでもあります。
同じ魚でも、捕獲方法や養殖の種類が違えば、他の海洋生物へ与える影響が小さくなったり、大きくなったりします。例えば、マグロの場合は、はえ縄漁、まき網漁、一本釣りの3つが主な漁業法ですが、その中でも一本釣りが他の魚も傷つけず、環境への負担も一番少ない持続可能な漁の方法です。
もちろん、捕まえる方法だけが重要なわけではありませんが、漁師さんと積極的にコミュニケーションを取りながら、「消費者が商品を買う際には、持続可能性も目安のひとつにしている」ということを伝えてみましょう。
買おうとしている種が乱獲されていないかなど、1.で紹介したWWFの『おさかなハンドブック』を見ながら会話をするのもおすすめです。
異なる漁法の特徴やその持続可能性については、WWFがまとめているこちらのサイトからどうぞ!
5. スーパーで質問してみよう!
スーパーの鮮魚コーナーの商品ラベルには、商品名・原産地・養殖の有無は書いてあっても、魚をどう捕まえたかは記載されていないケースが大半です。しかし、それでは購入しようとしている魚が本当に持続可能か判断するのが難しくなります。
スーパーでもさかな屋さんと同様に漁獲方法を聞いてみましょう。質問をすればするほど、スーパーの責任者も気にせざるを得なくなってきます。
直接話すのが難しい場合は「意見箱」やウェブサイトの「お問い合わせ」ページを活用するのも効果的です。
お店にとって、お客さんからの意見はありがたいもの。意見箱に書かれた要望は思いの外、反映されることが多いです。
これは、スーパーだけでなく、レストランなどで外食するときにも同じことが言えます。魚の原産地、漁獲方法、養殖かどうかなど積極的に店員さんとコミュニケーションをとってみてはいかがですか?
真摯に対応してくれる店員さんが大半だと思いますので、回答をいただいたら感謝の気持ちを伝えられると、お互い気持ちよく食事ができそうですね。
6. 食品ロスを減らそう!
食品ロスとは、「まだ食べられるのに廃棄される食品」のことです。
消費者庁によると日本では、年間2,550万トンの食品廃棄物が出されています。
このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は612万トン。
これを国民一人当たりに換算すると「お茶腕約1杯分の食べもの」が毎日捨てられていることになります。
この食品ロスのうち約半分が家庭からでるものです。その理由は、食べ残しや傷んでいた、賞味期限が切れたからなど、気をつければ未然に防げそうなものが目立ちます。
食品ロスは、特に季節事のお祝いの際に増える傾向があります。
節分の恵方巻き、土用の丑のうなぎ、クリスマスのケーキ、お正月のおせち、バレンタインのチョコなど。
家族や友人、大切な人が一同に集まるお祝い事は楽しいし大切ですが、大量に食材を買い込む前に今一度考えてみましょう。
「こんなに食材いるかな?」
「こんなに作って余らないかな?」
「傷みかけている食材は冷蔵庫にないかな?」
買いすぎないこと、作りすぎないこと、余ったらゴミ箱ではなくて、次の日のお弁当や冷凍保存するなど、少しの工夫と習慣付けで食品ロスは意外と簡単に減らせます。
魚に限らず、私たちが毎日口にする食べ物は自然からいただいた大切な命です。
その大切な命を無駄にしないように、感謝の気持ちを持ち、美味しく、残さず食べましょう。
7. 釣りやスピアフィッシングはルールを調べよう
釣りやスピアフィッシングは一度に捕まえる魚の量も少なく、混獲の恐れもほとんどないので、商業目的の漁業と比べると環境に優しいと言えます。
魚を個人で捕まえる際には、使用可能な道具・捕獲可能な魚の種類・サイズ制限が各都道府県別に決まっていますので、事前に確認されることをおすすめします。
詳しくは下記リンクから、水産庁のウェブサイトをご覧ください。
都道府県漁業調整規則で定められている遊漁で使用できる漁具・漁法(海面のみ)
ですが、いくら「漁業調整規則上は問題ないから」と言っても、必要以上の量の魚を獲ったり微妙なサイズの魚を持ち帰るのは避けたいところ。自分と自分の家族が食べるのに必要なサイズと量の魚を持ち帰って、「いただく命」を粗末にしないように心掛けたいところです。
また、日本でもオーストラリアでも、海を潜っていると釣りの際に切れたのであろうプラスチック製の釣り糸やルアー、釣り用の餌が入っていたプラスチック製の袋が海底や海中に漂っているのを見かけます。
釣りをする上で釣り糸が切れてしまうのは仕方のないことかもしれませんが、海に取り残された細くて頑丈な釣り糸は、海洋動物やサンゴに絡まり、その命さえも奪ってしまいます。
最近では生分解性の釣り具を販売する釣り具店もあります。行きつけのお店で生分解性の釣り具が見つからない時は、店員さんに入荷のお願いをしてみましょう!
この記事に出会ったのもきっと何かの運命です。これを機に、環境に優しい釣り人を目指してみませんか?
8. 魚を食べる量、減らしてみる?
ここまで、持続可能な魚を食べるコツを話してきましたが、いっそ魚を食べる量を減らしてみるのはいかがでしょうか?
わたしたちが食べる魚の量が減れば減るほど、市場全体の需要が減り、それに伴って漁獲量もじきに減っていきます。
今まで週3日で魚を食べていたなら、それを週2日に減らしてみる。
その代わり、新しい野菜料理を試してみる!
例えば、「魚が絶対に必要!」と思うお寿司だって、野菜だけでこんなに見た目も鮮やかな美味しいお寿司を作ることができます。
私のオススメのお野菜寿司の具材は、アボカド・納豆・きゅうり・人参・かぼちゃ・煮きのこ・ほうれん草・豆腐です。
それぞれが好きな具材を選んで、その場で作る手巻き寿司は盛り上がること間違いなしです!
次のホームパーティーのメニューにいかがですか?
これまでに話してきたとおり、現在の漁業は様々な問題を抱えています。
それでも、「魚を食べる。」と選択したのであれば、持続可能な魚を選ぶために正しい知識を身につけることが大切です。
これは水産物だけに限ることではありませんが、商品が安いのには必ず理由があります。その理由の中には、私たち消費者の目に見えないところで犠牲になっている、自然環境や他の動物の命、人権が含まれている可能性があります。
まずは、魚を買うとき・食べるときに「この魚は果たしてどこから来ているの?」、「どうやって作られたの?」、「海の環境に悪影響を及ぼしていない?」、「安いのはなぜ?」と疑問を持つ習慣をつけてみましょう。
漁業を営む人々にとって、資源管理や海の環境にも配慮したまじめな漁を行うのは、それなりにコストが掛かります。そして、そのお金や労力は、販売される水産物の値段に反映されます。そこに、資源や環境を犠牲にして漁獲された、ただ単に安いだけの水産物をわたしたち消費者が選ぶようなことがあれば、魚の乱獲はより進み、命を落とす野生動物も増えてしまいます。
何かを買うということはその商品を、その会社を、そして、その市場をサポートすることに繋がります。
この記事をきっかけに、 消費者である私たちの選択がもたらす結果を、今一度考えてみませんか?
あなたも環境問題の解決に貢献しませんか?
ひとりひとりが協力して行動を起こせば大きな変化が生まれます。
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【メンバー紹介:長谷川佳苗】
四六時中エコなことを考えている「エコフリーク」なわたしはみなさんが自分のためにも環境のためにも持続可能で健康的なライフスタイルを送るヒントを見つけるお手伝いをできればと思い、当ブログを書かせていただいています。地元名古屋から始まった地球に優しい生活への旅。これまでゴミ拾い、ビーガンピクニック、ヨガ、気候変動に関するプレゼンテーションなどのイベントを企画して、350名以上の方と関わってきました。また、政府に気候変動への取り組みを訴えている国際的な団体Fridays For Future Nagoyaの主要メンバーも務め、元アメリカ副大統領のAl Gore氏主催のClimate Reality Leadership training を受講し気候危機に関する知識も深めてきました。環境問題について話すことが「意識が高いこと」ではなく当たり前になる社会を目指して、オーストラリアから情報を発信していきます!