おぢかアイランドツーリズム:地球に優しいシンプルな生活とは?島の「当たり前」から得るヒント

mymizu Blog Series「給水からはじまるストーリー」

当シリーズではmymizuの給水パートナーの方々をご紹介しています。どんなお店や人が、何をきっかけに、どんな想いを持って給水パートナーになってサステナビリティに取り組んでいるのでしょうか。新たな発見を見つけに行きましょう!

 

家に食べ物が余ってしまったとき、みなさんはどうしますか?

冷蔵庫に入れて保存しておく人もいれば、やむを得ず捨ててしまう人もいるかもしれません。では、ご近所さんに渡すというのはどうでしょう?これが選択肢としてすぐに出てくる人は少ないかもしれません。

そんな地域のご縁が今も当たり前にあり、支え合う文化が根付く場所があります。長崎県の五島列島北部に位置する島、小値賀島です。

小値賀島は、複数の島から構成される小値賀町の島の1つ。山がないため、なだらかな土地であることが特徴です。この島の総合観光窓口を担っているのが、おぢかアイランドツーリズムです。

今回は、同団体に勤めている、木寺さんとビクトリアさんのお二人からお話を伺いました!木寺さんは10年ほど前に神奈川県から小値賀島へ移住されました。ビクトリアさんは、自然が好きで、日本の離島に住みたいという想いから、日本国内の島を調べる中で小値賀島のホームページを見て、素敵なデザインと積極的な姿勢に惹かれ、移住を決めたそうです。

(左:木寺さん、右:ビクトリアさん)


小値賀町内には、世界遺産の一部として登録されている野崎島も含まれており、長く深い歴史を持つ地域であることが分かります。また、海が豊かであり中国や韓国も地理的に近いため、古くから様々な地域の人が絶えず訪れ、栄えた地域だったそうです。

しかし近年は、少子高齢化の波が押し寄せ、手に取るようにして人口減少が感じられる状況にあるとのこと。小さな島であるからこそ、社会問題が生活のすぐ傍に感じられるそうです。おぢかアイランドツーリズムは、この状況を打開するため、観光を通じて島を支えようと尽力しています。

おぢかアイランドツーリズムの主な事業内容として、

● 一人一人に合わせた旅を提案する「島旅コンシェルジュ」

● 島のありのままの暮らしを体験できる「民泊」や「古民家ステイ」

● カヌー体験やサイクリングツアーなどの自然体験

● 子ども達を対象とした、自然と触れるツアーの開催

などが挙げられ、幅広い事業を手がけていらっしゃいます。

これらは、どれも新しいものを取り込んだのではありません。もともと島にある自然や文化を上手く活用して、島を訪れた人々にありのままの小値賀を感じてもらうことを大切にされています。そのための仕組みとして、観光客と島の人の結びつきを生み出すような事業を展開されているのです。

今年、2021年の夏休みには、長崎県内の小・中学生を対象に自然環境について学ぶ「おぢか宝島キャンプ~OJIKA GREEN CAMP~」を開催しました。海ゴミをテーマに、専門家の方からお話を聞き、ビーチクリーンも実施。4日間、親元を離れて自然に触れ、島の子どもとも交流し、新たな経験をすることで、子ども達も楽しみながら学び、多くの刺激を得ていたようです。

団体名にもある「アイランドツーリズム」は小値賀島の観光を表現するのに使われており、他の地域ではほとんど使われていない表現です。歴史や文化、自然など島の本来の魅力を引き出し、自然体での暮らしをまるごと体験することができる観光のことを指しています!小値賀町の楽しみ方にぴったりな表現だと感じられますね。


ありのままの生活こそが、島の魅力になる

そんな小値賀島での暮らしは、「身の丈に合う暮らし」「半自給の暮らし」と表現されています。実際に、皆さんはどのような生活をしていらっしゃるのでしょうか。

「小値賀島では、お米や野菜など何でも作ることができるんです。海に囲まれているので、地元の人は夕方に釣りをして、自分で食べる魚は自分で釣って食べています。家庭で食べきれない分は、島外の家族や孫に送ったり、近所に配ったりしています。」

身の回りの自然から季節ごとに手に入るものをいただいて「生かされている」と感じる、と木寺さんが話してくださいました。とても素敵な感覚だと思いました。

ビクトリアさんも、おすそ分けの経験を教えてくれました。

「食べ物をいただいても農家ではない私はお返しができないので、出かけた先で美味しいものを買ってきて渡すこともあります。」

こうして地域での繋がりが育まれ、ご縁が生まれていることは、とても暖かいことに感じられますね。農家さんが漁師さんにお米を渡し、漁師さんが農家さんに魚を渡す、という光景があたりまえのように見られ、小値賀島ではお金を介さないやり取りも多いようです。通貨がなくても生活できるかもしれない、と感じてしまうほど!

このような地域の輪を都会で感じることは難しくなっているようですが、小値賀島での古民家ステイや民泊を通じて、その暮らしを体感することができます。

宿泊施設となっている古民家は、築100年ほどの歴史ある民家です。その活用方法に悩んでいた際、小値賀島に取材のため訪れていた方が古民家をとても気に入ってくださり、「古民家での生活体験が、島外の人にとって魅力がある、特別な経験になり得る」ということを教わったそうです。

同様に民泊では、島の住民の方の家に泊まらせていただくことによって、島の暮らしを肌で感じることができる機会を提供されています。リゾートホテルを誘致するのではなく、地域の人と観光客が交流できる場を設けることで、島のありのままの暮らしを守りながら、経済をまわしていくことができるのですね。

これらのプログラムは、島のみなさんの協力なくしては成り立ちません。小値賀島は外部との交流が盛んだったため、おもてなしの心が根付いています。ところがこれは無償の優しさから生まれていたので、地元の人にとっては、観光を経済資源とするアイデアに親しみを持つことが難しかったそうです。

それでも、島を訪れた多くの人々が民泊や古民家ステイを楽しむ様子を目にする中で、島内でも理解が広がっていったのでした。現在では多くの方が協力してくださっています。

木寺さんは、小値賀島での暮らしを通じて、それぞれの生活の在り方を考え直すきっかけにもなればと考えていると話してくださいました。「非日常」ではなく、自分ではない他の誰かが過ごしている日常、という意味で「異日常」を体験することによって、日々の生活を見直す一つのきっかけになる、ということです。

一人一人の「当たり前」の基準がそれぞれであり、なかなか見つめ直す機会が得られないものです。だからこそ、いつもとは違う生活に触れることはとても心に残る経験になるだろうと感じました。


自然を守り、行動を起こすきっかけを作る

小値賀島周辺の海は魚種が多く、イサキと太刀魚がブランド化されているなど、豊かな自然に囲まれていることが分かります。

ところが、ここでも漁網や海洋ゴミの影響が見られているとのこと。国境離島ということもあり、国内・国外かかわらず様々な場所から流れついています。それでも、その影響を受けるのは島の人々。漁師さん達が海の清掃も行っているそうです。

行動を起こしている人は、漁師さんだけではありません。島のボランティア団体では、小値賀のために役に立ちたいという想いから10年ほど前からビーチクリーンのイベントを行っています。月に1回のペースで開催され、現在も続いています。島を想って始まった取り組みが、自然を守ることにも繋がり、多くの人によって受け継がれてきたのですね。

観光客の方の中にも、自らビーチでゴミ拾いをしてくださる方が多いとのこと。中には、素手で拾っている方も見られ、何かできることはないかと考えていたそうです。

その中で誕生したのがポシェット型のクリーンキットでした。キットの中には軍手、生分解性プラスチックのゴミ袋、そして活版印刷のポストカードなどが入っています。こちらは、海外での取り組みから発想を得たそうです。地元の漁師さんが使わなくなった大漁旗を材料に、裁断から縫い付けまですべて地元の皆さんが作っていらっしゃいます。

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観光の途中でこのキットを知ってビーチクリーンに関心を持ち、実際に清掃をはじめる方もいらっしゃるとのこと。自然環境に目を向けるための素敵なきっかけとなっていますね。

さらに、最近小値賀島で始められたのが、プロギングというスポーツアクティビティ。これはジョギングとゴミ拾いを掛け合わせたもので、みんなで一緒に運動をしながら街をきれいにしていくことができます!

ただし、単純なゴミ拾いではありません。あくまでもスポーツであるため、ゴミを拾う際には膝を使って屈伸をすることを意識するなど、とてもユニークな活動になっています。また、ゴミを拾ったらみんなで賞賛の合言葉を掛け合います。こうしてチームが一体となって活動できる点も大きな魅力なのだそうです。

ビーチに限らずどこでも身近な場所から始められる点が、プロギングの良いところ。皆さんも、運動しながら地域をきれいにしてみませんか?小さな一歩が積み重なることで、変化を起こすことができるはずです。

このようにおぢかアイランドツーリズムでは、島の文化と自然を大切にしながら、観光によって地域経済に貢献し、島内外の人々を繋いでいます。そんな小値賀島で暮らすお二人は、持続可能な観光 サステナブルツーリズム についてどのように考えているのでしょうか。

「すぐに変化を起こすことは難しくとも、まずは気付きや学びを得られる仕組みを作ることが大切だと考えています。例えば、カヤック体験とビーチクリーンをセットにしたツアーを企画することで、観光客の方にどんなゴミが流れてきているのかを、実際に目で見て理解してもらう。そんな機会を用意できたらと思っています。」


mymizuを以前から知ってくださっていて、最近給水パートナーにもご登録いただきました。mymizuを知ってはいたものの、「これは小値賀でもできるのでは?」と考えたのが最近だったのだそうです!

そのきっかけは、観光客の方々がサイクリングに出かける前などに自動販売機で飲み物を買っていく姿を見たことだったそう。小値賀島での旅の出発地である港ターミナルで給水することができれば、観光客の方にも利用してもらいやすいのではないかと思われたそうです。

島の観光窓口として、たくさんの方の旅のお手伝いをされているからこその視点ですね。実際にマイボトルを持ち歩いている人を見かけることも増えているそうで、これから利用機会も増えてほしい、と話してくださいました。

公的機関とも連携されていることから、給水パートナーへの登録は難しいかもしれないと思っていらしたのですが、相談してみたところ快く承諾してくださったそうです。地域全体で自然環境を守る意識が共有されていること、そして、このように同じ想いを持って取り組んでいらっしゃることがとても伝わってきました。

島の課題を解決する取り組みとしての側面を持つと同時に、島ならではの良さを引き出し、新たな価値観や視点から島の日常を捉えることを可能にした、おぢかアイランドツーリズム。


私たちの身の回りにも、他の地域や人にはない魅力が眠っているかもしれません。そして、異日常を知ることによって自分自身の当たり前や判断基準から距離をとって考え直し、新たなスタートを切ることも出来るでしょう。

<編者後記>

インタビューの中で、高齢化が進んでいる小値賀島の現状を「日本の縮図」と表現されていました。現在、日本各地で高齢化や過疎化が見られ、いかにして経済を維持するかということに対応を迫られている地域もあるでしょう。

しかし課題解決は、実はとても身近なところから楽しく始められるものであるかもしれません。背伸びや無理をして着飾った形ではなくとも、ありのままの街や自然がすばらしい魅力を持っていることがあるのです!それに気づくことができれば、小値賀島のように、暖かく持続的な社会を作ることができるのではないかと感じました。


おぢかアイランドツーリズム

〒857-4701 長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷2791-13 小値賀港ターミナル内

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【ライター紹介:NATSUKI】

 
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社会課題を解決することについて何でも興味が湧いてしまう大学3年生。お気に入りの時間は、近所の河川敷で一人でぼーっとしているとき。そんな環境で育ったため、都会で一人暮らしを始めてから、身近に自然に触れることができるありがたさに気付きました。「給水からはじまるストーリー」を通じて、給水パートナーの想いを広めて、人にも地球にもやさしい輪が広がることを願っています。