haishop cafe:企業が挑む、サステナブルな事業のはじめの一歩

mymizu Blog Series「給水からはじまるストーリー」

当シリーズではmymizuの給水パートナーの方々をご紹介しています。どんなお店や人が、何をきっかけに、どんな想いを持って給水パートナーになってサステナビリティに取り組んでいるのでしょうか。新たな発見を見つけに行きましょう!

 

皆さんは企業が環境問題に取り組むことは難しい、と感じますか?

サステナブルな事業への挑戦を試みても、山積する課題や社会の現状を学ぶうちに、なかなか一歩踏み出すことができなくなり、簡単ではないと思う人や会社も多いようです。

しかし、実際に何もできないのでしょうか。

課題を認識して、できないことを探すのではなく何か少しでもできることに目を向けることができたら、社会にはたくさんの優しい選択が溢れてくるかもしれません。

そんな等身大の挑戦を実践しているお店が、横浜みなとみらいにあります。株式会社Innovation Design が運営するhaishop cafeです。

今回は、同社サステナブルデザイン室長の表秀明さまにお話を伺いました。


haishop cafeは、2019年9月オープンし、食事やスイーツなどを提供しています。取り扱うのはフェアトレードのコーヒーや、大豆ミートなど環境にも人にも優しいメニューばかりです。

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使用する食材に込められた、優しいこだわり

例えば野菜は、地元の農家さんが育てたものを使用。その地域にお店があることの意味を考えて、地元の農家さんと協働する形を目指したのだそう。移動距離が短いことによって二酸化炭素の排出量も抑えられ、地産地消にも貢献することができます。トースト用のパンには、形が少しだけ規格に合わないものが使用されています。形が悪いというだけでその品質や味に変わりはなく、美味しくいただけるとのことです。

このように、社会的課題解決に繋がる理由背景がある食材が使用されています。そして、なんとこれはお店で使用するすべての食材に当てはまることなのだそうです!

暑い時期におすすめな商品は、かき氷!

熟し過ぎたトマトを使用したガスパチョ風かき氷や、わずかな傷によって廃棄されていたすだちをシロップにしたかき氷、有機抹茶やフェアトレードコーヒーを使用したかき氷など、それぞれがストーリーを持った商品になっているとのことです。

これらは社会的課題に関連する背景を持っています。しかしそれらを一方的に伝えるのではなく、「美味しそう!」「健康に良さそう!という気持ちを大切にしてポジティブな側面から興味を持ってもらい、その後に食材が持つストーリーや環境問題のことを伝える、という自然な流れが生まれることで、より多くの人に知ってもらうきっかけができるとのことです。


店舗の運営全体においても社会や環境に配慮

またhaishop cafeは、食材選びだけでなく、店舗の運営全体においても社会や環境に配慮した取り組みを行っており、日本サステイナブル・レストラン協会 (SRA-J) に加盟しています。日本サステイナブル・レストラン協会とは、地球環境や人権・労働に配慮した方法での調達および調理、提供に取り組む飲食店によって構成される団体です。アニマルウェルフェアから健康への配慮、そしてエネルギー資源に至るまで、『調達・環境・社会』を軸とした多岐にわたる項目に取り組んでいます。このような指標が、これから飲食店を選ぶ際の新たな基準となることが期待されます!

表さんは、SRA-Jに加盟して以来、地域のコミュニティに貢献することの大切さを学ばれたとのこと。地元で栽培をしている農家さんの食材をより多くの人に楽しんでもらい、地域の交流も生まれるような集いの場を目指して実現したのが、haishop marketでした。

このhaishop marketでは量り売りでの販売をメインとされています。これが、コミュニケーションのきっかけになっているそうです。「これ3個ちょうだい!」「これ100gください!」と声を掛けてもらうことによって、「今日は美味しい茄子が入ってるよ」など会話が続いていくとのことです。どこか懐かしい雰囲気も感じられます。さらに、プラスチック使用料を抑えるため、どうしても必要なものに限ってビニール包装を採用し、その他の包装として主に新聞紙を活用されています。現在はコロナ禍のためビニール包装が必要となっているそうですが、まずはこのような姿勢を持つことが大切だと感じられました。


また、店舗内にはmymizuが給水パートナーの方に登録時にお渡ししている「mymizuステッカー」が貼られています。mymizuステッカーを貼ることで、お客さんとストーリーを共有する機会が生まれているとのこと。スタッフの方々が、ステッカーに関心を持ってくださったお客さんに向けて、給水パートナーであることを紹介し、その背景にある環境問題のことにも話題を広げていくことができるそうです。


このように、haishop cafeは、その地域に店があることを活かして地元に貢献し、新たなものを創り出し、人々から愛されるような場所作りに取り組んでいます。その中で、身近に実践できるサステナブルな活動も始めていらっしゃいます。そうした暖かな繋がり等身大の挑戦こそ、持続的な活動になるのだと感じました。


カフェだけではなく、次世代との取り組みも

Innovation Designでは、haishop cafe以外にも様々な事業を手がけられ、教育機関での出張授業も行なっていらっしゃいます。最近実施したものでは『境界線を超える』というテーマのもと、「廃棄物と宝物」「子供と大人」などの境界線を超えることで、新しい価値を創造することや、モノはどこからやって来るのか?捨てたあとはどこに行くのか?という視点を学び、その後LANケーブルやボタン、プラスチックの破片などの産業廃棄物由来の素材を使用してアート作品の制作に取り組んだそうです。

表さんは、子ども達の純粋な姿から学んだことがあると言います。

「はじめから、子ども達はその素材を廃棄物だとは思っていないんですね。それらは、彼らから見たら宝物です。そうやってモノと純粋に向き合っている姿を見て、子ども達にワークショップをしたはずが逆に我々大人が学ぶ機会となりました。」

はじめから廃棄物として存在するものなどはなく、私たちが廃棄物と見なすことで多くのものが捨てられてしまう。これに気付くことができれば、私たちの身の回りには価値あるものが溢れているのかもしれません。

表さんは「何か行動を起こす時、気づき学びが礎になっていると思うんです。たまたま子ども達ならそれが学校という場になるけれど、大人も一緒。学びこそ大切だと考えて取り組んでいます。」と話してくださりました。


学びを行動へ繋げていくコツ

これらの事業をまとめていらっしゃる表さんは、現在haishop cafeに限らず多種多様な事業の指揮をとっていらっしゃいます。

ところが、実は表さんご自身は、サステナブルデザイン室長となられた時点ではSDGsや持続可能性などの言葉に馴染みがなく、0から学ぶ段階でのスタートとなったそうです。様々な業界で社会課題に取り組んでいる方々から多くのことを学び、日本サステイナブル・レストラン協会などの存在も知り、既存の事業に取り入れられる活動から少しずつサステナブルな方向に舵を切っていきました。学びを大切に、行動を起こし続けています。

ただし、会社の理念や事業内容を変更することができても、働いている社員の方々の考え方に影響を与えることは非常に難しく感じられるものです。この点は、どのように克服されたのでしょうか。

「日本サステイナブル・レストラン協会に加盟するためのチェックリストを活用して、スタッフ全員に宿題として食品ロス、エネルギー問題、海洋汚染などの担当分野を割り当てました。そして、それが大切である理由や解決に向けたアクションをスタッフそれぞれが調べて発表する場を作りました。」

すべての研修に出席した後、スタッフ全員がサステナブル・デザイナーという肩書を持つことになるそうです。この会社には、マーケティングや企画などの肩書は存在しないとのことで、驚きました!役割の垣根がないことによって、部門を超えた横の繋がりを持っていることが、会社としての強みにもなっているとのことです。

一人一人が責任を持って調査から発表まで取り組むことによって、受け身にならない自発的な学びが得られます。さらに、全員が企画に参加するため、一緒に挑戦する雰囲気や一体感を生み出すことができるように感じられますね。

また、発表の内容を知識としてインプットして終了、ということがないように、発表の最後には「自分達が社内でできること」を必ず紹介するようにしていたそうです。これによって、簡単なものは次の日にも導入され、次々と行動に変換していくことができたのです。

給水パートナーへの登録も、スタッフの方がmymizuを見つけてくださったことがきっかけだったそうです。オフィス内ではマイボトルを使用するルールがあり、個々人が好きなボトルを選び、楽しみながらエコな生活を実践されています。一人一人の意識が少しでも高まることによって、様々な情報の入手や楽しみ方に繋がることが分かりますね。

このように社会や環境に優しい事業に関心を寄せる企業は多いものの、なかなか実際に変化を伴うことができない現状もあります。そのような企業の方々に向けたアドバイスとして、表さんは完璧じゃなくていいというお話を聞かせてくださりました。


「例えばコンポストができない会社でも、ゴミの量を毎日どれくらい捨てているか測ることはできます。測るだけでも、意識が変わってくるはずなんです。僕たちもまだまだ毎日勉強の日々ですが、100点じゃなくても一歩踏み出すことが大切だと思います。」


haishop cafeをはじめ、幅広い形態で様々な分野において社会課題解決に取り組むInnovation Design。そして、学びや気づきから多くのことを吸収し、プライベートでもマイボトルを使いオーガニック製品を意識するなど変化があったという表さん。

会社という大きな組織だからこそ、個人の力では実施することが難しい事業にも挑戦することができます。既存の事業があるからこそ、現状をスタートラインにしてより良い選択を少しずつ取り入れることができます。企業だからこそできることがたくさんあるのです。

Innovation Designそして表さんのように、様々な立場の人々と協働し、日々の学びをバネにして、完璧ではなくとも変化を求めていく姿勢は、私たちが一歩前進するために背中を押してくれるように感じられます。


<追記> 2022.06.09

日本サステイナブル・レストラン協会が主催する「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2021」においてhaishop cafeが大賞を受賞されました!

地域の食品ロス削減への貢献や、従業員全員を巻き込んだ取り組み、NGOや教育機関との連携が評価されたようです。おめでとうございます!


<編者後記>

さまざまな出会いや発見を、社会課題解決に向けた方向修正の機会と捉え、短期間に次々と行動に移されていく姿勢に、とても感銘を受けました。サステナブルデザイン室発足からまだ2年も経っていないことは、本当に驚きです。

今回のインタビューにて、表さんが話されていた「足るを知る」という言葉が大変印象に残っています。これは、日々の生活においても、会社の事業においても当てはまることです。何か新たな活動を始めようとした時、完璧な形ではなくとも普段より少しだけより良い選択をしてみることが大切なのだと改めて感じられました。


haishop cafe

〒231-0002 神奈川県 横浜市中区 海岸通 5-25-3 1F

 haishop cafe: Facebook, Instagram

 Innovation Design: ホームページ

 
 
 

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【ライター紹介:NATSUKI】

 
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社会課題を解決することについて何でも興味が湧いてしまう大学生。お気に入りの時間は、近所の河川敷で一人でぼーっとしているとき。そんな環境で育ったため、都会で一人暮らしを始めてから、身近に自然に触れることができるありがたさに気付きました。「給水からはじまるストーリー」を通じて、給水パートナーの想いを広めて、人にも地球にもやさしい輪が広がることを願っています。